私の東京物語
伊吹マリ、松永てるほなど、今はなき日劇ミュージックホールの踊り子たち、「箏曲教授」の札を掲げた娼家とその女たちとのまじわり、年に一度かつての客から香水を贈られる元娼婦の心情、赤線廃止後の向島「鳩の町」の思い出、無残にも伐られてしまった銀座の柳並木と露店の消滅、浅草や新宿にあったスポーツランド……。
坂を愛し、雑踏を愛し、都会を愛した作家の眼がとらえた昭和30、40年代の東京。
その懐かしい風景の数々を垣間見ることができるアンソロジー。
「もう、父親にやられてんの、いやんなっちゃったし」性暴力を続ける義父と、見て見ぬふりをする実母にうんざりして、16歳で家を出た静子の凄絶な青春時代。
逃避行、東京への出奔、セックス、中絶、旅館の住み込みからスナックのホステスとなり、マンガ家や歌手への夢を抱いて再び上京、レーサー崩れの男との結婚・破局まで、激流のような、辛苦と希望が交錯する日々。
映画化された話題沸騰作『ファザーファッカー』とともに、内田春菊の原点を描く傑作小説。
青い海の色をしたアクアマリン──床にオガ屑を撒いた酒場で出会ったのは、海で行方不明になったらしい息子を探し続ける医者だった。
赤い血の色をしたガーネット──渋谷の中華料理屋の主人が貸してくれた宝石は、スランプだった「私」に赤い色にまつわる記憶を呼び覚ます。
乳白色の月の色ムーン・ストーン──その石を手に入れたときから、心に生まれた白い核。
若き女性編集者と情事を重ねながら、その核心を追い求める「私」。
三つの宝石に託して語られる、作者絶筆の三部作。
材木問屋の若旦那、栄次郎ときたら、いずれ大店を継ぐ安楽な身の上のくせに、他人を笑わせ、他人に笑われ、ちょっぴり奉られもしたいがために、絵草紙の作者になりたいと思い焦がれている。
悲しいかな、その才能は皆無なのだが、それを知らぬは本人ばかり。
暢気でお調子者の若旦那を主人公としたこの小説、江戸・寛政期の風俗と実在の戯作者たち、洒落や地口を綺羅星のごとくちりばめて、あまりのばかばかしさに読者が吹きださずにはいられない、第六十七回直木賞受賞作の傑作時代小説。
伊賀忍びの頭領の家に生まれた半蔵は、忍者としての才能を評価され若き家康の元に仕えることになった。
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